eコマース業界を革新するハイスループットオートメーションシステム

ハイスループットがトレンドになった理由

今日の急速に変化するeコマース業界とグローバルサプライチェーンにおいて、顧客の期待に応えることは重要な課題です。しかし、数十万ものSKUを取り扱う大企業にとっては、簡単なことではありません。市場が急成長を続ける中、これらの企業は多種多様な商品ラインを提供するだけでなく、スムーズで柔軟な受け取りサービスや迅速な配送サービスを提供する必要もあります。ある調査によると、配送が遅いと他のサイトに乗り換えてしまう消費者は、全体の85%に上ることが報告されています。

そこで必要となるのが、より大規模で複合的な倉庫運営です。しかし、効率の低下や人件費および不動産コストの増加、在庫切れやミスの増加、物流の遅延といった課題に直面する企業も少なくありません。

そのような中、高度で柔軟性があり、効率的な倉庫自動化システムは、いまや関連企業に不可欠となっています。PUMA社の米国インディアナポリスにあるハイスループットAutoStore倉庫を運営・管理するBob Philon氏は、いまの時代で生き残るためには、ハイスループットシステムは必須条件だと主張し、次のように語っています。

「厳しい言い方になりますが、テクノロジーやオートメーション、イノベーションを活用して成長を目指すか、それとも後退するか、そのどちらかしかないと思います。」

しかし、eコマース業界では今後数年間、年4%から5%の成長が見込まれるため、大規模な自動化システムを導入したとしても、継続的な業務拡大が必要になると小売各社は予想しています。

ハイスループットシステムとは何か？

一般的に、ハイスループットのフルフィルメント業務は、大規模な施設内に設置され、幅広い在庫を迅速に処理し、顧客の需要と期待に応えることを目的としています。

この種のシステムは、ロボット工学やソフトウェアなどの先進技術を活用し、施設全体の商品と情報の流れを最適化します。その主な目的は、倉庫業務のスピードと生産性、正確性、全体的な効率を高めることです。

堅牢なハイスループット倉庫自動化システムは、通常、以下のコンポーネントや機能を備えています。

自動倉庫システム（AS/RS）：

AS/RSシステムは、AutoStoreのようなキューブ型構造、または垂直型のラックで自動的に商品の保管および取り出しを行います。この技術は、スペースの利用を最適化し、商品のピッキングにかかる時間を大幅に短縮して、迅速なオーダーフルフィルメントを可能にします。

倉庫管理システム（WMS）：

堅牢なWMSソフトウェアは、ハイスループットなオートメーションシステムの中核でもあります。在庫管理、注文処理、タスク割り当てなど、すべての倉庫業務を調整および最適化します。

オートメーションマテリアルハンドリングシステム：

これらのシステムには、倉庫内で商品を搬送するコンベヤーシステム、仕分けシステム、無人搬送車（AGV）、自律走行搬送ロボット（AMR）などがあります。これらのシステムにより、商品を迅速かつ正確に移動できるため、人の作業負担を軽減できます。

コンベヤーシステム：

コンベヤーシステムは、ハイスループット倉庫に欠かせないものです。商品をある場所から別の場所へ効率的に搬送できるため、手で運んだりカートを押したりする手間が省けます。特に形状やサイズが一定している品物の移動に役立ちます。

ロボットピッキングシステム：

‍‍高度なコンピュータービジョンとグリッピングテクノロジーを搭載した倉庫ロボットは、棚、ビン、パレットから商品を高速でピッキングでき、しかも正確です。eコマースで一般的な多品種少量注文の処理に優れています。

仕分けシステム：

‍ソーターは、配送先、サイズ、重量などの事前定義された基準に基づいて、商品を適切な梱包または出荷エリアに効率的に仕分けします。これにより、エラーが削減され、梱包プロセスがスピードアップします。

在庫管理システム：

これらのシステムは、リアルタイムデータを使用して、倉庫内の商品の場所と数量を追跡します。これにより、エラーを最小限に抑え、在庫の精度を向上させることができます。

データ分析と報告：

高度な分析ツールは、倉庫管理者がパフォーマンスを監視し、ボトルネックを特定し、データに基づいた意思決定を行って効率を向上させるのに役立ちます。

安全対策：

センサー、アラーム、フェイルセーフなどの安全機能は、ハイスループット倉庫で作業員と設備の両方を保護するために非常に重要です。

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ハイスループット倉庫自動化システムのメリットとは？

ハイスループット倉庫自動化システムは、人件費の削減とオーダーフルフィルメントの迅速化を目的としています。ロジスティクスの合理化により、eコマースでの需要やオムニチャネルへの対応を迫られている企業にとって不可欠なものとなっています。

非常に大規模な倉庫にとって、ハイスループット倉庫自動化システムによる注文処理の正確性は重要な利点のひとつです。オートメーションはヒューマンエラーのリスクを最小限に抑えるので、注文どおりの商品を確実にピッキング、梱包、出荷でき、顧客満足度の向上につながります。

なぜハイスループット倉庫において注文処理の正確さが重要なのか？

大規模なフルフィルメント業務において、なぜ正確性が重要なのかを理解するために、2%のエラー率（98%の正確性）を持つ大規模倉庫を例に考えてみましょう。平均的な規模の企業の場合、商品の輸送、再梱包、再入庫を考慮すると、1つのエラーは36ドルのコストに相当します。SKU数が膨大な大企業の場合、手違いが甚大な影響を及ぼすため、コストははるかに大きくなります。

•6,000,000ユニット/年=ピッキングエラーのコストは440万ドル

•1,000,000ユニット/年=ピッキングエラーのコストは72万8,000ドル

ハイスループット倉庫はどのような技術を用いているか？

ハイスループット倉庫で最大の効率と生産性を達成するには、基本的なコンポーネントとその仕組み、そして他の機械やシステムとシームレスに統合する方法を理解することが不可欠です。ハイスループット倉庫は通常、以下のコンポーネントで構成されます。

倉庫管理システム（WMS）：

WMSソフトウェアはオペレーションのブレーンとして機能し、すべての倉庫活動を調整および最適化します。オートメーションシステムと連携して、注文が効率的に処理されるようにします。

マテリアルハンドリング機器：

AGVやコンベヤーシステムは、ロボットピッキングシステムやAS/RSと連携して動作し、商品が倉庫内をシームレスに移動できるようにします。これらのシステム間の調整が、ボトルネックを回避する鍵となります。

データと分析：

‍オートメーションシステムからのデータを活用してパフォーマンスを監視し、改善すべき領域を特定し、プロセスを最適化するためにデータ主導の意思決定を行います。

注文管理システム（OMS）：

OMSは、WMSおよびオートメーションシステムと統合して、リアルタイムの注文追跡を可能にし、注文が正確かつ時間どおりに履行されるようにします。

ハイスループット倉庫でのAutoStoreの活用法とは？

大規模な倉庫の場合、AutoStoreはフルフィルメント業務の中心となります。在庫を迅速かつ正確に保管して商品を搬送するだけでなく、ほぼすべてのサードパーティ製ソフトウェアやハードウェアと相互運用可能です。これは、複数のコンポーネントが相互に接続し、連携して動作する必要があるレイアウトにおいて、非常に有益です。

AutoStoreの活用事例としては、次のようなフローが考えられます。まず、SAPなどのERPシステム（入荷した商品と利用可能な在庫品をすべて管理および追跡するシステム）とAutoStoreを接続します。これらのシステムは相互に通信して、キューブストレージのグリッド内に商品を保管します。注文データはWMSソフトウェアに送信され、WMSは、コンベヤー、AGV、ピースピッキングロボットなど、さまざまな種類の機械を調整および最適化して、商品が倉庫内をシームレスに移動し、ボトルネックを回避できるようにします。AutoStoreロボットは、グリッドから商品の入ったビンを取り出し、ワークステーション（ポート）に搬送します。最後に、作業員はビンから商品を取り出し、出荷用に梱包してラベルを貼ります。  

これは、ハイスループットAutoStoreの機能を示す基本的な例にすぎません。必要に応じてコンポーネントを追加することで、処理速度、正確性、効率性を高めることができます。たとえば、OMSをWMSと統合することで、リアルタイムでの注文追跡が容易になり、注文が正確に時間どおりに処理されるようになります。ピックトゥライトやプットトゥライトなどのデジタルシステムをポートに導入することで、作業員は商品を取り出す場所と格納する場所を視覚的に把握できます。  

ハイスループットなフルフィルメントを実現するAutoStoreの技術とは？

AutoStoreでは、ハイスループットなフルフィルメントに効果的な技術を数多く生み出しています。AutoStoreのツールは、設計から設置、建設、試運転、始動、運用に至るまで、ハイスループット施設のライフサイクル全体をサポートするように設計され、最適化されています。

以下の動画では、Product Management DirectorのAnders Mathisenが、大規模なeコマースフルフィルメントについて説明しています。ここをクリックしてぜひご覧ください。

設計と設置

AutoStore Grid Designer and Simulator：当社独自のソフトウェアです。最新バージョンでは、最大500×500セルおよび100万個のビンのグリッド設計とシミュレーションが可能です。大規模オペレーション向けの設計ガイドラインや新しいコンポーネントにも対応しています。

Grid Level：AutoStoreを設置するには、安定した水平なグリッドが不可欠ですが、非常に大規模な設置では、コンクリート床が500,000平方フィートを超えることもあり、水平を確認するのが困難な場合があります。Grid LevelはAutoStoreロボットに搭載され、詳細な平面の測定を行い、傾斜、ピーク、ダンプなどのグリッド上の偏りを正確に検出します。

試運転

Flexible Grid Cell™は、大規模なAutoStoreシステムに高い耐久力を提供するように設計されたグリッドコンポーネントです。グリッドのアルミニウムは、温度変化により構造が歪む可能性があります。Flexible Grid Cellは熱膨張の影響を緩和し、大規模なグリッドシステムの安定性と継続的な稼働をサポートします。  

Grid Bracer™を使用すると、アルミニウムグリッドの枠組みを柱や壁に取り付ける必要がなくなり、グリッドが自立します。グリッドの構築が容易になるのでAutoStoreシステムを導入しやすくなります。保管スペースを最大限に活用した設置が可能になり、リードタイムとコストを削減する効果もあります。

AutoStoreグリッドの運用

B1™ロボット：24時間365日の稼働と超ハイスループットに適した高速ロボット。スピーディな動作で生産性を最適化します。  

FusionPort™：働く人の快適性・生産性を維持する、人間工学に基づいた高速ワークステーションです。ビンの搬入口が2つあり、ピックトゥライト機能を搭載しています。ピッキング準備ができるまでビンの搬入口を閉じたままにする安全ハッチを備えています。

FusionPort Staging™：1つのワークステーションでピッキングとステージングを行えます。グリッドに直接保管できるのでフロアスペースを節約できます。

RelayPort™：ビンの高速処理を可能にするワークステーション。ビンの交換時間は最短3秒で、1時間あたり最大650個のビンを処理できます。

Router™制御ソフトウェア：Routerは継続的に改良されており、システムのスケールアップ時にも同じ効率性と信頼性を維持します。最近の改良点としては、計算時間と経路の最適化、サポートするロボット数をグリッドあたり1,000台以上に増加、全方向500セルのサポートなどがあります。

Bin ResQ™ Robot：あふれているビンや故障したビンの回収を迅速にサポートします。ビンを回収するためにユーザーがシステム内に入る必要がなく、回収中もシステムは稼働し続けます。これにより安全にビンを回収でき、システムの稼働率を高めることができます。

サービスとモニタリング

Unify Analytics™は、AutoStoreのインテリジェンス機能を強化するソフトウェアです。リアルタイムのパフォーマンスデータを収集して運用上のボトルネックを特定します。従来のリアルタイムのログデータ収集・分析を完全に自動化するため、データに基づく意思決定を促進し、パフォーマンスの最適化とビジネスの成長を支援します。

AutoStore Console™は、パフォーマンスを監視するための使いやすいインターフェイスです。ハイスループットのお客様の増加に応え、インシデント処理機能とシステムオペレーターとの通信が改善されました。具体的には、イベントとエラーコードの表示、グリッドの問題に対するアクションと解決、システム停止が必要になる前にセルをブロックする機能が改善されています。  

ハイスループットAutoStoreシステムを導入した企業とその理由

お客様がAutoStoreを選ぶ理由はさまざまですが、最も多いのが信頼性（世界での平均稼働率99.7%）とモジュール性です。フルフィルメント業務を継続しながらグリッドを拡張できるため、新たな倉庫スペースを確保したり、コストをかけて倉庫の改修や増築をする必要がなくなります。しかし、AutoStoreのハイスループットシステムの最も重要なメリットは、99.99%という精度の高さです。

AutoStoreによりピッキングエラーがほぼゼロになるため、たとえ1%～1.5%のエラー削減でも、企業全体では投資収益率（ROI）を大幅に向上できます。

• THG社は、国内外の複数の施設からフルフィルメントおよび宅配管理サービスを提供し、多様なカテゴリーに対応しています。THGの英国の施設の一つには、世界最大かつ最も効率的なAutoStoreグリッドの一つが設置されており、30以上のブランドを運営しています。この施設では、1日に320,000件の注文ラインを受注・発送しており、さらに多くの処理が可能で、ピッキングエラーをほぼ排除し、労働力の要件を大幅に削減しています。また、24か月でROIを達成しました。
• アメリカの輸送および物流プロバイダーであるGeodis社は、オムニチャネルに対応したフルフィルメント業務にAutoStoreを使用しており、1日あたり最大40万件の注文を処理しています。同社は2年以内に目標のROIを達成する予定です。  
• 「Forever Faster」をモットーとするPUMA社では、インディアナポリスの物流センターでAutoStoreを使用しており、米国内からの卸売およびeコマース両方の注文に対応しています。1日10万件超、SKU8万超という膨大な処理のすべてを、99.8%の精度を誇るAutoStoreでカバーしています。同社はAutoStoreシステムの投資回収期間を5年と想定していましたが、わずか1年で達成しました。

• ヨーロッパのファッション小売企業であるBoozt社は、1,150台以上のロボットを使用したAutoStoreシステムにより、1件あたり50秒以下で注文を処理できるようになりました。Boozt社は2017年にAutoStoreシステムを導入して以来、必要に応じて規模を拡大し、フルフィルメントコストの削減と同時に200%の収益増を実現しました。
• Walmartグループ傘下のイギリスのスーパーマーケットASDA社では、2つのAutoStoreグリッドを運用するイギリスのラッターワースの施設で、99.8%のピッキング精度を達成し、生産性を2倍に向上させました。

結論

eコマースの急成長を受け、ハイスループットオートメーションシステムは小売企業の成功に必須なものとなり、今までにないレベルの効率性と正確性をもたらしています。そのような中、迅速かつ正確な配送を求める顧客の期待に応えるため、大規模なマテリアルハンドリング、保管、搬送を最適化するさまざまな技術を統合した、高度なハイスループット倉庫の需要が高まっています。その最大の利点は注文処理の精度向上で、顧客満足度の向上にもつながります。大規模な倉庫では、2%のエラー率でも数百万ドルの損失になる可能性があるので、エラーを最小限に抑えることは極めて重要です。

ハイスループット自動化倉庫の運用にはさまざまなシステムの統合が必要です。その中心的な役割を果たすのがWMSで、マテリアルハンドリング機器や注文管理システムなどのさまざまなコンポーネントを統括して業務を管理します。AutoStoreのシステムは、サードパーティのソフトウェアやハードウェアとの互換性があり、すべての要素と円滑に連携させることができるため、ハイスループット倉庫の主役と言っても過言ではありません。

AutoStoreは、設計・設置ツールから高度なロボット、さらにはシステムパフォーマンスを監視し最適化するソフトウェアまで、ハイスループットフルフィルメント向けのさまざまな技術を提供しています。AutoStoreは大規模な倉庫改修を行うことなくグリッドを拡張できる柔軟性とモジュール性を備えており、これは99.99%という驚異的な正確性とともに、急成長する企業にとって大きなメリットとなっています。実際に、THG社、Geodis社、PUMA社、Boozt社、ASDA社では、ハイスループットAutoStoreの導入により正確かつ効率的なオーダーフルフィルメントを実現して短期で投資を回収しており、AutoStoreシステムの投資価値の高さを証明しています。

結論として、AutoStoreに代表されるハイスループットオートメーションシステムは、eコマース業界のフルフィルメント業務を大きく変えています。スピード、正確性、適応性が最も優先される現代のサプライチェーンにおいて、これらのシステムは企業が抱える課題のソリューションとなります。eコマースが拡大を続ける中、ハイスループットオートメーションシステムはもはや選択肢の1つではなく、競争の激しい小売業界を勝ち抜くための必須条件です。