ラストマイルとは何か、また物流業界におけるラストマイルへの取り組みについて解説します。
通信業界では、「ラストマイル」は最終的な通信区間を意味します。では、物流業界における「ラストマイル」とは、どのような意味でしょうか。
荷物が配送される際、顧客に届けられるまでに複数の拠点を経由します。物流業界では、その最後の拠点から配達までを「ラストマイル」と呼びます。荷物の仕分けや出荷準備の工程はデジタル化され、ロボットの導入によって管理や処理の負担は軽減されていますが、最後の工程である配達には、依然として人による作業が必要です。
この記事では、ラストマイルに関連する課題を説明するとともに、物流業界で課題に対処するための戦略をご提案します。
ラストマイルとは、荷物が顧客のもとに到着する前の最終段階のことであり、距離の意味ではありません。配送拠点から顧客までどれぐらい離れているかによって、荷物は複数の拠点を経由して顧客のもとに届けられますが、最終配送拠点から配達までがラストマイルと呼ばれます。
近年のネット通販事業者の急増に伴い、注文から配達完了までの時間を短縮するために、最終配送拠点を各地域に設けることの重要性が高まっています。無料配送などの質の高いサービスを提供するには、最終配送拠点が顧客の近くにあることが非常に重要です。つまり、ラストマイルを効率化する方法を見つけることが極めて重要なのです。
eコマース事業者がより多くの顧客を引き付け、リピーターを増やすには、商品だけでなく、充実した配送サービスの提供が重要です。
例えば、多くのeコマース事業者は、無料配送、当日配送、翌日配送などのサービスを提供しています。そのため、多くのeコマース事業者がラストマイルの強化に力を入れ始めており、運送会社側も、それに対応できるようサービスを拡充する必要があります。
前述のように、eコマース企業が送料無料や当日配送などのサービスを提供している一方で、運送会社は利益率の低下やドライバー不足などの課題に直面しています。また、不在配達による配達員の負担も増加しており、ラストマイルの強化に対応するためには、運送会社側の対策も求められています。
eコマース事業者は、顧客に送料無料サービスを提供する代わりに、配送会社への支払いを減らして配送コストを削減することがあります。この場合、配送業者が配送量の増加に対応するために人員を増やしたとしても、配送代金が安いので利益率は減少してしまいます。
一部の運送会社では、人件費を削減し、利益率の低下を最小限に抑えるため、コンビニ受け取りサービスを提供しています。しかし、この手法は追加料金を伴うため、包括的な解決策とは言えません。この問題を根本から解決するには、無料配送ではなく有料であってもeコマース事業者に利用してもらえるような、信頼性と安全性に優れたサービスを運送会社が提供する必要があります。
eコマース業界では、顧客満足度がますます重視されるようになっています。さまざまな方法で商品を受け取りたいという顧客からの要望が高まれば、見過ごすわけにはいきません。このような傾向は、特に2020年頃から新型コロナウイルスのパンデミック禍でオンラインショッピングが急増したことで、さらに強くなっています。
その結果、運送会社の負担が増大し、配達員の酷使や作業量の増加など、さまざまな問題が発生しています。特に、配送コスト削減の動きは、配達員の賃金低下、再配達のための待機時間の増加、それに伴う労働時間の延長といった、さまざな問題を生んでいます。
2017年に実施された運送会社による運賃値上げにより、労働環境はある程度改善されたように思われますが、それでも配送量の増加に対応しきれないのが現状です。さらに、少子高齢化による人口減少により、ドライバーの高齢化・減少という課題にも向き合わなければなりません。
ラストマイルをより効率的にできれば、顧客の利便性が向上します。たとえば、コンビニ受け取りサービスの導入、ラストマイルより前の工程でのミスの削減、ドローンによる配達などにより、配達員の負担が軽減され、顧客にとっての柔軟性が高まり、商品が時間どおりに確実に届くようになります。
コンビニエンスストア受け取りは、リードタイムと全体的な顧客体験にプラスの影響を与えます。コンビニエンスストアで注文と受け取りを行えるようにすることで、顧客は配送の遅れを回避し、注文品の準備が整い次第、柔軟に受け取ることができます。自動倉庫システム(AS/RS)の導入は、コンビニエンスストア受け取りを強化し、ラストマイルを効率化する上で重要な役割を果たすことができます。
コンビニエンスストアにAS/RSシステムが導入されれば、注文から受け取りまでの時間が大幅に短縮されます。AutoStoreのAS/RSを導入すれば、通常1時間以内に注文品を店舗で受け取れるようになります。スタッフが勤務中であるかにもよりますが、注文からわずか数分で受け取れることも少なくありません。このようなスムーズな受け取りは、顧客満足度の向上につながりますが、もし24時間365日のサービスであれば、さらに利便性が高まります。たとえば、一般向けのPickUpPortを設置すれば、準備が整い次第、いつでも顧客が都合の良いときに商品を受け取ることができます。
ただし、必ずしもすべてのAS/RSシステムがコンビニエンスストアに適しているわけではありません。重要なのはスペース効率であり、この点で特に優れているのがキューブ型AS/RSです。このキューブ型AS/RSソリューションは保管容量が大きく、都市部やコンビニの限られたスペースでも大量の注文に対応できます。このテクノロジーを活用すれば、ラストマイルが大幅に最適化され、オペレーションの効率化とカスタマーエクスペリエンスの向上につながります。
コンビニエンスストアでの受け取りだけでなく、運送会社の営業所での受け取りなど、宅配以外の複数の選択肢をお客様に提供することも重要です。
全体的な配送効率を高めるためには、プロセスの早期段階でエラーを減らすことも効果的なアプローチです。ピッキングプロセスを自動化すると、ピッキングエラーが大幅に削減され、その結果、コストのかかる再配達やそれに伴う遅延が減少します。
自動化には、ピッキング作業にかかる時間を短縮し、その時間をラストマイルの効率化に向けた仕分け作業に充てることができるという利点もあります。これにより、輸送業者が手作業で荷物を仕分ける負担が軽減されます。AutoStoreのAS/RSは、このような改善を可能にするツールを提供し、より効率的でスムーズなラストマイルの実現をサポートします。
顧客中心の効率的な配送ソリューションに対する需要の高まりを受け、物流業界では、ラストマイルの重要性が議論されるようになりました。eコマース企業や運送業者は、顧客要求の多様化に応えつつ、配送業務の利益率の低下、ドライバー不足、不在配達などの問題を克服するという課題に直面しています。業界を取り巻く環境の変化に合わせてラストマイルを強化するには、革新的な戦略の実行、テクノロジーの活用、配達員の労働条件の向上が不可欠です。消費者の好みの変化に適応していくこと、それに伴ってオペレーションを最適化すること、この2つが物流業界での競争力の維持につながり、最終的には顧客満足度の向上にもつながります。