リバースロジスティクスにはコストと時間がかかります。しかし、カスタマーサービス、プロセス改善、アウトソーシング、テクノロジーを適切に組み合わせることで負担を軽減できます。
出荷された商品の3個に1個が返品されていることをご存知でしょうか。また、返送料無料サービスや簡単に返品できるサービスを提供していないと、オンライン顧客の80%以上を失うという調査結果もあります。せっかく出荷能力を増強しても、返品処理で利益が減ってしまっては元も子もありません。そんな事態に陥らないよう、適切なフルフィルメント戦略と必要な機器を整え、効率的で持続可能なリバースロジスティクスシステムを構築することが重要になります。
リバースロジスティクスとは、商品販売後の返品・検品を管理するプロセスを指します。どの小売業においても重要なプロセスですが、特にオンラインで商品を販売する企業にとって大きな問題となります。eコマースの場合、顧客が購入前に商品を実際に確認できないため、返品率が高くなるからです。
一般的には、リバースロジスティクスは次の5つのカテゴリーに分類されます。
どのような理由であれ、返品された商品の受領、検品、廃棄・修理、在庫への反映といった作業は、返品数量が多くなるほど時間とコストがかかります。不動産の専門家による推定では、フォワードロジスティクス(元々のオーダーフルフィルメントプロセス)に比べ、リバースロジスティクスに必要となるスペースと労力は平均で20%も多いとされています。
現状、返品率は増加傾向にあります。Narvar社のレポート「State of Returns 2022(返品の現況2022)」によると、2021年に小売企業に返品された全商品の金額は、7,610億ドルにものぼります。また、全米小売業協会とAppriss Retail社の調査では、米国の小売企業の売上のうち、返品によって失われた額は2022年には8,160億ドルにのぼると報告されています。
さらに、金融サービス大手のKlarna社の調査では、オンライン購買客10人のうち8人以上(84%)が、返品対応が悪いとその会社を利用しなくなるという結果を示しています。
ビジネス上、このような問題を無視することはできません。しかし、リバースロジスティクスは時代とともに複雑化し、コスト高になるばかりです。
これらの課題を解決するために企業が実施できる戦略は色々ありますが、以下にご紹介する5つの方法をお勧めします。
第一に、顧客が十分な情報を得た上で購入できるよう、商品の情報や画像を常に改善し、返品の防止に努めることが重要です。返品をゼロにすることは不可能ですが、顧客の苦情やデータに細心の注意を払えば、その量を減らすことはできます。
顧客が返品しやすいよう、明確な手引と返品ラベルを提供します。返品理由などの十分な情報と共に商品が適切な場所に戻ってくれば、その後の処理もスムーズです。顧客に店舗に持ち込んでの返品を促せば、手続きが簡単に済むだけでなく、実店舗の客足が増える効果も期待できるかもしれません。
返品商品が到着したら、できるだけ早く検品し、在庫に戻すプロセスを確立しておく必要があります。従来の小売業と同様、多くの企業では、返品された商品を通常の在庫に戻して再販したり、不良在庫として値引きしたり、「開封済み商品」として再販する場合もあります。返品商品の受け取り、検品・処理、在庫反映のための自動システムやソフトウェアを導入すれば、コストの削減と正確性の向上に役立ちます。
これらのヒントは、社内で実行することも、サードパーティー・ロジスティクス(3PL)プロバイダーに委託することも可能です。ただし、返品商品の受け入れ処理には個別の対応が必要となり、新品の受け入れよりもはるかに手間がかかることを念頭に置く必要があります。
自動化ソリューションを導入すれば、労力の問題を軽減できます。AutoStoreは、返品対応を効率化するのに最適なツールです。倉庫と検品プロセスが直結しているので、在庫に反映する手間を減らして作業効率を上げることができます。
また、個々の商品に特定の場所を充てるように設計して、その場所を優先的にピッキングすることができます。必要であれば、同じSKUが保管されているビンの一番上に返品商品を置くこともできます。これにより、作業員が長い距離を歩いたり、仕分けをしたりする手間が省け、大幅な労働力の節約になります。さらに、返品された商品をすぐに新しい顧客が買えるようになるので収益の向上につながり、これが最も重要なメリットとも言えます。
プロセスの自動化はリバースロジスティクスの改善に効果的な方法ですが、各社のオペレーションに合わせてカスタマイズされていることが前提となります。そこで、大量の返品に頭を悩ませていたある世界的企業でAutoStoreを導入した事例をご紹介しましょう。
パンデミックが始まってからの返品数の急増は、小売業界全体に見られる傾向でしたが、この企業への影響は特に深刻でした。2020年以降50%も増加しており、従業員4万人以上、年間売上高30億ドルという巨大な組織全体に次々と痛手を与え、破滅的とも言える状況になっていました。
この企業では、人の手作業によるP2G(Persons-to-Goods)システムをベースにした、既存のインフラでこの問題に対処しようとしましたが、失敗に終わりました。保管密度(保管場所ごとのユニット数が少ない)、オペレーターのパフォーマンス(ピッキングに時間がかかる)、オーダー精度(不正確な入庫処理)などの点で、非効率的だったからです。
最終的に、既存のインフラでは立ち行かなくなってしまいました。
そこで、この企業はAutoStoreを導入することにしました。システムの導入により入庫フローが最適化され、オーダー精度が向上し、ピッキングミスが減少しました。AutoStoreのキューブ型グリッドでは、商品をビンに収納して縦に積み重ねて保管できるようになったうえ、ビンは区分けされているので複数のSKUを保管できます。これにより在庫容量が4倍になりました。
AutoStoreのG2P(Goods-to-Person)ワークステーションの導入により、ピッキング率は300%向上しました。この企業が抱えていた複数の課題が一度に解決され、わずか3年で投資を回収できました。
返品管理には相当のコストとリソースが必要となるため、企業はリバースロジスティクスの改善に積極的に取り組むことが重要です。返品を防止する仕組みを整え、顧客の返品プロセスを簡素化し、倉庫での受け取り・検品・在庫への反映作業を効率化すれば、コストを最小限に抑えるのに役立ちます。作業のやり方を変えるだけでは不十分な場合は、倉庫ロボットシステムなどのインフラ投資が、より効果的な選択肢かもしれません。