在庫回転率とは何でしょうか。それはどのように計算され、どうすれば改善されるのでしょうか。この記事で詳しく解説します。
在庫回転率の概念は知っていても、その計算方法や目的を知らない人は多いのではないでしょうか。
在庫回転率は金額や数量で計算することができ、在庫の流れを可視化するために利用されます。在庫回転率を知れば商品の売れ行きを把握できるため、無駄な在庫を持たずに済み、コスト削減にもつながります。
本ページでは、在庫回転率について、定義、計算方法、注意を払うことによるメリット、改善方法について説明します。
在庫回転率は、商品回転率とも呼ばれ、企業の販売活動により一定期間に在庫数がどのように変化し、在庫が何回入れ替わったかを示す財務指標です。売上原価と平均在庫金額を用いて計算する方法と、在庫商品数から計算する方法があり、在庫推移として可視化できます。在庫回転率は、経営戦略や在庫管理の参考となり、企業の経営状況が目標に達しているかを確認する手がかりとなります。
在庫回転率の目的は、在庫の動きを可視化することです。一般的に、在庫回転率は低いよりも高い方が良いとされています。
例えば、AとBの2つの商品があったとして、1か月あたりの在庫回転率が「Aは1」「Bは3」と算出された場合、Bのほうが売れていると判断できます。在庫回転率の悪い商品は、保管や廃棄にコストがかかる可能性があるため、企業としては、在庫を溜めないための対策が必要となります。
在庫回転率の計算は難しいと思われがちですが、金額や個数を用いた簡単な計算で算出できます。ここからは、最も一般的な計算方法をご紹介します。
在庫回転率は、年間の売上原価(売上原価)を平均在庫価値で割ることで計算できます。年間の売上原価は、次の式を使用して計算されます。
「年初の商品在庫の価値+その年の仕入額-年末の商品在庫の価値」
売上高の代わりに売上原価を使用する理由は、平均在庫金額が仕入商品の原価を表しているからです。実際の売上高には、販売商品の利幅が含まれているため、状況を正確に表すことができません。
例えば、「売上原価÷在庫金額」の計算式で、在庫金額が100万円、年間売上原価が1,000万円の場合、「売上原価1,000万円÷在庫金額100万円=回転率10」となります。つまり、在庫はおよそ37日ごとに入れ替わります(365日÷10回)。
この事例の場合、在庫回転期間を365日の日単位で計算しましたが、月単位で計算したい場合は、知りたい期間に応じて12で割って算出します。
「平均在庫金額」と「棚卸資産」という用語は、同じ意味で使われることがあります。
数量を用いる場合、一定期間の「出庫総数÷平均在庫数」で在庫回転率を算出します。
仮に、1年間に出庫された在庫商品の総数が500個、期首の在庫商品の数が100個、期末の在庫商品の数が100個であったとすると、次のように計算できます。
金額による計算は決算書に基づくので経営陣向けですが、在庫数による計算は従業員でも簡単に行えます。
この計算式に当てはめれば、目標在庫回転率をクリアするために必要な平均在庫量を割り出すこともできます。
在庫回転率と在庫回転期間を分析することにより、適切な在庫管理が実践されているかどうかを評価できるようになります。
適正在庫とは、在庫数が過不足なく適正であるという意味です。在庫回転率が可視化できれば、現状の在庫管理が適正に行われているかを把握することが可能となります。
例えば、平均在庫金額が1,000万円、年間売上高が5,000万円の場合、在庫回転率は5回/年となり、約2.4ヶ月に1回在庫が入れ替わることになります。
年間在庫回転率が高い場合、その企業は効果的な在庫管理を実践し、最適な在庫水準を維持していることが分かります。
在庫日数は、現在保管されている在庫がすべて売れた場合、何日分の売上になるかを表し、「在庫金額(販売価格)÷1日の平均売上高」で算出できます。
在庫日数は業種や商品によって異なるため、自社の販売状況を考慮しつつ、適切な日数を設定することをおすすめします。
リードタイムとは、製造元に商品を発注してから倉庫に納品されるまでの所要日数を指します。適正な在庫回転日数を維持するには、補充注文のリードタイムも考慮する必要があります。
リードタイムを10日、在庫回転日数を30日と設定した場合、少なくとも10日分の在庫が残っているときに補充注文をする必要があります。また、リードタイムは購入する品目に応じて大きく異なる場合があるため、各商品の所要日数を常に把握しておくことが重要です。
海外からの輸入の場合、海上輸送と航空輸送でリードタイムに大きな差が生じることがあります。リードタイムの見積もりを誤ると、在庫切れに陥るかもしれません。リードタイムを考慮した上で、商品ごとに適正な在庫回転日数を設定し、欠品が発生しないように管理する必要があります。
例えば、リードタイムが1週間未満と短いにもかかわらず、在庫回転日数が50日と長い場合、その商品の在庫数量が適切ではないのかもしれません。一方で、輸送コストも考慮に入れる必要があります。多くの場合、輸送コストをかけて頻繁に補充注文をするよりも、保管期間が長い方がコストは低くなります。
在庫回転率を把握し活用することにより、収益性の向上やコスト削減につながる経営戦略を実行できます。ここからは、そのような適正管理の具体的なメリットをいくつかご紹介します。
在庫回転率は、在庫の流れを可視化し、適切な品質管理を可能にします。在庫が長期になると、商品によっては劣化や賞味期限切れで販売できなくなり、廃棄せざるを得なくなる場合もあります。
どの商品がどのようなペースで売れているかを把握するためには、商品ごとの在庫回転率を感覚ではなく数値として知ることが重要です。
在庫回転率の高い在庫は売れ筋商品であるため、リードタイムを考慮しながら適切に仕入れることができれば、機会損失を防げるようになります。
機会損失とは、利益を増やすための機会を逃すことであり、経営状況に大きく影響します。利益を向上させるためには、在庫回転率を仕入れのタイミングの指標として活用しながら、経営戦略を実行していくことが重要です。
在庫回転率は販売状況によって変動するため、顧客がどのような商品を求めているのかを知ることができます。1年のうち特定の時期だけ売れ行きがよい商品もあり、利益向上のためにはその時期に仕入れるべき数量を特定することが重要です。
また、在庫回転率の高い商品は多くの需要があると判断できるため、在庫を切らさずに仕入れることができれば、売上増につながる可能性があります。逆に、在庫回転率の低い商品が長期間保管されている場合、保管スペースを圧迫するだけでなく、無駄な保管コストを発生させている可能性があるため、値引きや廃棄を検討した方が得策かもしれません。
自動キューブストレージ技術を使うなどして保管容量を増やすことにより、回転率の高い商品をより多く保管し、顧客の需要を効果的に満たすことができます。顧客のニーズを把握することは、売上を伸ばしてコストを削減する経営戦略の立案に役立ちます。
在庫回転率を把握することによって、適正在庫を可視化できるようになり、在庫過多の問題を回避できます。さらに、数年分の在庫回転率のデータを比較することにより、適正在庫量をより正確に把握し、必要な数の商品を仕入れることができます。
たいていの場合、余剰在庫の内訳は売れ行きの悪い商品です。そのような商品を大量に仕入れてしまうと、コストのかかる余剰在庫がさらに増えます。コスト削減のためには、各商品の売れ行きを把握することが欠かせません。
在庫回転率を高め、コスト削減と顧客満足度の向上を実現するためにも、経営戦略に以下の4点を盛り込むことを検討しましょう。
目標在庫回転率は、年間目標売上高を目標平均在庫金額で割ることにより算出できます。
年間売上目標が3,000万円、目標平均在庫金額が300万円の場合、在庫回転率の目標は10となり、在庫は1.2ヶ月ごとに入れ替わることになります。
従業員のモチベーションを高め、年間の運営方針を決定するには、目標設定時に同業他社の在庫回転率を考慮しながら、在庫回転率の具体的な目標を設定することをお勧めします。
リピート率を高めるには、顧客満足度を高めることが重要です。そのためには、受注から荷物の配達までのリードタイム、つまり商品が顧客に届くまでの時間を短縮することが効果的です。
リードタイムを見直して、短縮できる業務がないか確認します。これにより、即日配送など、顧客の配送タイミング要件を満たすことができます。その影響は、在庫回転率の向上に最もよく表れます。
保管コストの発生を回避するには、回転率の低い商品の在庫回転率を上げることが重要です。これを実現する効果的な方法の1つは、商品の販売価格を見直し、場合によっては価格を下げることです。
ただし、大幅な値下げは企業のブランド価値に悪影響を及ぼす可能性があるため、販売価格を変更する際には注意が必要です。また、商品を廃棄する場合にも、デメリットやコストが発生することがあります。
したがって、価格設定や在庫管理に関する決定を行う前に、慎重に検討する必要があります。
倉庫管理システムには、ロジスティクス業務の効率化を目的とした機能が備わっており、その導入により在庫回転率の向上が期待できます。たとえば、RFタグを商品に貼り付け、モバイルRF端末で読み取ることにより、商品の個数や保管場所をリアルタイムに把握できます。もちろん、ラベルやモバイルスキャナーを利用することも改善手段の一つになるでしょう。
倉庫管理が不十分で、商品の品質が劣化したり、在庫の保管場所を間違えたりすると、顧客への納品までのリードタイムが長くなり、在庫回転率が低下するので注意が必要です。
在庫回転率は、一定期間内に企業が在庫を回転した回数を、売上原価と比較して示します。最適な在庫数を維持し、在庫フローを視覚化し、コスト削減に貢献するための重要な指標として機能します。この比率は、効率性と在庫管理方法について多くのことを教えてくれます。経営陣は、この比率によって自社を業界内の類似企業と比較することもできます。ただし、輸送費、オフショアまたはニアショアでの製造、季節的要因などの他の要因によって、比較できる内容が限られることがあります。
在庫回転率を向上させるには、目標を設定するだけでなく、リードタイムや販売価格を見直し、最新の倉庫管理システムを導入することも効果的です。